
サンゴや熱帯魚、カメやクラゲなど、普段、私たちが目に触れることがない海の中の生命が、キャンバスの上で息を吹き返す。強い生命力と繊細な美しさが宿り、時に幻想的な世界を生み出す。描くのは葉山に暮らす画家・山田結美さんだ。「人生を本当に海に全振りしている人間」と笑う山田さん。東京生まれ横浜育ちだが、物心ついたころから海が大好きだった。高校時代にダイビングの資格を取得。卒業後はインストラクターとして活躍し、やがてサーフィンにも魅せられた。横浜から湘南の海へと通い続け、10年前、ご主人の転職を機に葉山へ移り住んだ。「潜りたい気持ちが爆発しました。春夏秋冬と潜って、海の中にも季節の移ろいがあるのが、本当におもしろくて潜るたびに感動します」。その自分の「心の震え」を、海の環境の変化への思いも込めて絵筆に託す。「1月、2月のキンキンに寒い時に、すごく澄んだ真っ青な海になるんですよ。『葉山ブルー』と呼ばれていて、心待ちにしているダイバーが多いんです」と誇らしげに語る。今は5歳の息子が中心の忙しい日々だが、ダイビングと絵を描く時間だけは欠かさない。「人生の夢は体が動く限り潜り続け、絵を描くこと」と、山田さんは目を輝かせる。
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